着て寝るだけで疲労回復?リカバリーウェアが、こんなに広がっていることへの違和感

第7章 「一般医療機器」という言葉は、思っているより少しややこしい

ここまで調べてきて、もう一つ気になっていることがある。それが、「一般医療機器」という言葉である。リカバリーウェアの商品ページを見ると、「一般医療機器」「医療機器届出済み」といった表示をよく目にする。

この言葉、なかなか強いよね。少なくとも私は、「医療機器なんだから、国が効果を確認した商品なんだろう」という印象を持っていた。でも、実際の制度を調べると、少し違った。

医療機器には「承認」「認証」「届出」がある

一口に「医療機器」といっても、すべて同じ手続きで販売されているわけではない。医療機器は、人体へのリスクなどに応じて分類されている。そして、ざっくり言えば、

リスクの高いものではPMDAなどによる審査を経た承認、
一定の基準が定められているものでは登録認証機関による認証、
そしてリスクが最も低いクラスⅠの一般医療機器では届出

という仕組みになっている。 リカバリーウェアの「家庭用遠赤外線血行促進用衣」は、このクラスⅠ。

つまり、承認ではなく、届出で販売される一般医療機器である。ここはかなり大事だと思う。「医療機器」という言葉だけを見ると、新薬のように大規模な臨床試験を行い、国の審査機関が一つ一つデータを精査し、「この商品には疲労回復効果があります」と認定しているように感じるかもしれない。しかし、そういう制度ではない。

そもそも「一般医療機器」とは、効果が強い医療機器という意味ではない

「医療機器」と聞くと、なんとなく、普通の商品より医学的な作用が強いものという印象を持つ。しかしクラスⅠの「一般医療機器」という分類が意味しているのは、むしろ安全性のリスクの低さである。法律上、一般医療機器とは、不具合が生じた場合でも、人の生命や健康へ影響するおそれがほとんどないもの。厚生労働省も、家庭用遠赤外線血行促進用衣について、「人体への影響がごく軽微であるものを対象とする分類」と説明している。

つまり、どこかにも書いたが、健康グッズは「低リスク低リターン」なのだ。

「一般医療機器」と大きく書いてあると、なんとなく、「身体にしっかり作用する医療的な服」という印象を受ける。しかし制度上は、身体への影響がごく限定的であることを前提とした医療機器なのである。

もちろん、「影響が軽微」=「効果がない」ではない。安全性リスクの分類と、有効性の有無は別の話だからだ。ただ、この言葉から受ける印象と、制度上の意味には、少し距離があるように思う。

実は、言っていい効果もかなり限定されている

この点について、厚生労働省のQ&Aはかなり具体的である。家庭用遠赤外線血行促進用衣では、血行促進。筋肉のこり改善。疲労の回復・改善。筋肉の疲れの軽減。などは、基準に沿って評価したうえで使用目的・効果として記載できる。

では、「腰痛が改善します」はどうだろう。だめである。

「関節炎が改善します」これもだめ。

「むくみ改善」「代謝アップ」「運動効率向上」「冷え性改善」

これらも、家庭用遠赤外線血行促進用衣という一般医療機器の範囲では認められていない。

さらに、人体の深部に作用することを示唆する表現も認められない。なぜなら、そこまで強い作用をうたうのであれば、「人体への影響がごく軽微」という一般医療機器の範囲を超えてしまう可能性があるからだ。厚生労働省はかなり明確に線を引いている。

もし、腰痛や神経痛、関節炎などの治療効果をうたいたいのであれば、一般医療機器として届け出るのではなく、新たな医療機器として臨床試験などのデータをそろえ、承認申請を検討する必要があるとしている。ここまで読むと、制度側は意外なほど慎重である。

それでも「着るだけで疲労回復」は強い言葉だと思う

ここで、私が引っかかっているところへ戻る。「疲労の回復」という表現自体は、家庭用遠赤外線血行促進用衣で認められている範囲に入っている。だから、「着るだけで疲労回復」といった広告表現を見ること自体は不思議ではない。もちろん実際の広告表現は薬機法の規制を受ける。医療機器について、効能・効果を虚偽・誇大に広告することは禁止されているし、認められた範囲を超える効果をうたうこともできない。

つまり、企業が完全に自由に言葉を選んでいるわけではない。それでも私は、「疲労回復」という言葉は、ものすごく大きな言葉だと思う。なぜなら、前章まで見てきたように、「疲労」にはいろいろなものがあるからだ。運動による筋疲労。睡眠不足。精神的な疲労。病気に伴う倦怠感。長時間労働による疲れ。全部、日常では「疲れた」の一言でまとめられる。

そこへ、「着るだけで疲労回復」と書かれていたら、消費者が、「昨日3時間しか寝てないけど、これを着れば回復できる」とまでは思わなくても、かなり幅広い「疲れ」に効くような印象を受けても不思議ではない。制度上の「疲労の回復」という言葉と、一般の人が想像する「疲労回復」。同じ四文字だけれど、頭の中に浮かぶものは、必ずしも同じではないように思う。

「一般医療機器」という文字も、それ自体が広告になる

これは私の勝手な感想である。商品ページに、一般医療機器と大きく書かれていたら、私はやっぱり少し安心する。「ちゃんとした商品なんだな。」「医学的な根拠があるんだな。」「普通のパジャマとは違うんだな。」そう思う。

おそらく、そう感じる人は私だけではないと思う。もちろん、実際に医療機器として届出され、定められた基準を満たす必要がある以上、その表示をすること自体に何の問題もない。問題にしたいわけでもない。

ただ、「一般医療機器」という制度上の言葉が、消費者の頭の中では“科学的に効果が証明された商品”という印象へ変換されやすいのではないか。そこには、少し注意しておいた方がいいと思う。

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koji(トレ​イン治療院 院長)はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師|国際中医専門員
大阪で治療院を開業して12年。 体は、その人の生き方や時間の積み重ねが静かに現れる場所だと感じています。 中医学を土台に、身体だけでなく心や生活の流れまで含めて整えていく。 そんな治療を大切にしています。 ブログでは、臨床の中での気づきや、体と向き合うための小さなヒントを、自分なりの言葉で書き残しています。 読んだ方の毎日が、少しでも軽くなれば嬉しい。
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