「どのくらい妊娠しなければ、不妊症になるのだろう」
「まだ病院へ行くほどではないのでは」
「一度妊娠や出産をしているから、不妊症ではないと思う」
不妊症という言葉は「妊娠できない」と断定するものではありません。不妊症は、一定期間妊娠が成立していない状態を表す言葉であり、その原因や妊娠の可能性、必要な治療は一人ひとり異なります。このページでは、不妊症の基本的な定義から、妊娠が成立するまでの仕組み、男女それぞれに考えられる原因まで、はじめて調べる方にも分かりやすく解説します。
不妊症とは
不妊症とは、妊娠を望む男女が避妊をせずに性交しているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態をいいます。日本では現在、一般的に妊娠を希望してから1年以上妊娠しない場合を、不妊症としています。以前の日本では、妊娠しない期間が2年以上続くことが不妊症の目安とされていました。しかし、結婚や妊娠を希望する年齢が高くなっていることや、海外での定義などを踏まえ、現在は1年間が基本的な目安となっています。
ただし、この「1年間」は、すべての方が必ず1年間待たなければならないという意味ではありません。年齢や月経の状態、これまでにかかった病気などによっては、妊娠を希望してから1年がたっていなくても、早めに検査や相談を始めた方がよい場合があります。
また、不妊症は「妊娠できないことが確定した状態」を意味する言葉ではありません。あくまでも、一定期間妊娠が成立していない状態を表すものであり、不妊症と呼ばれる状態になったあとに自然妊娠する方もいます。一方で、卵管の閉塞や精子の数が非常に少ない場合など、妊娠するために医療的なサポートが必要なケースもあります。妊娠の可能性や必要な検査・治療は、年齢、妊娠を希望している期間、男女それぞれの身体の状態によって異なります。
妊娠が成立するまでには、いくつもの過程があります
妊娠は、卵子と精子が出会うだけで成立するわけではありません。 排卵から着床まで、いくつもの過程が順番に進む必要があります。 各項目を開くと、その段階で関係する主な原因や疾患も確認できます。
01 卵子が育ち、排卵する 卵巣で育った卵子が、卵管へ取り込まれます
卵巣の中では、卵子を包む卵胞が育ちます。 十分に成長した卵胞から卵子が放出されることを排卵といい、 排卵された卵子は卵管の先端に取り込まれます。
月経があっても、毎回必ず排卵しているとは限りません。 排卵が起こりにくい場合や時期が安定しない場合には、 妊娠の機会が少なくなることがあります。
この段階に関係する主な要因02 精子が子宮から卵管へ進む 精子が腟、子宮頸管、子宮を通って卵管へ向かいます
射精された精子は、腟から子宮頸管、子宮を通って卵管へ向かいます。 妊娠につながるためには、十分な数の精子があり、 卵子が待つ場所まで進む力を持っていることが必要です。
精子の数や運動性だけでなく、精子をつくる機能や通り道、 勃起や射精、子宮頸管の状態なども関係します。
この段階に関係する主な要因03 卵管で卵子と精子が出会い、受精する 卵管内で卵子と精子が出会い、受精卵になります
通常、卵子と精子は卵管の中で出会います。 精子が卵子の中に入り、両者の遺伝情報が合わさることで 受精卵ができます。
卵管が塞がっている場合や、卵管周囲に癒着がある場合には、 卵子が取り込まれにくくなったり、 卵子と精子が出会えなくなったりすることがあります。
この段階に関係する主な要因04 受精卵が分裂しながら子宮へ移動する 受精卵は発育しながら、数日かけて子宮へ進みます
受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、 数日かけて卵管から子宮へ移動します。 ただし、受精したすべての卵が順調に発育するわけではありません。
この時期の受精や発育は、通常のタイミング法や人工授精では 身体の外から直接確認することができません。
この段階に関係する主な要因05 受精卵が子宮内膜に着床する 子宮へ到達した受精卵が、子宮内膜に入り込みます
子宮へ到達した受精卵が、妊娠に適した状態となった 子宮内膜に入り込むことを着床といいます。
着床後は妊娠に関係するホルモンが分泌されますが、 着床してもその後の発育が続かず、 月経予定日ごろまでに妊娠が終わることもあります。
この段階に関係する主な要因不妊の原因は、女性だけにあるわけではありません

不妊というと、女性の身体に原因があると思われることがあります。しかし実際には、男性側に原因がある場合もあれば、男女双方に原因が関係している場合もあります。こども家庭庁が紹介しているWHOの調査では、不妊症のうち、男性のみに原因がある割合が24%、男女ともに原因がある割合が24%とされています。つまり、不妊に悩むカップルのおよそ半数では、男性側にも何らかの原因が関係していることになります。
ただし、これは「男性と女性の原因が必ず半分ずつ」という意味ではありません。不妊の原因には個人差があり、女性側の要因と男性側の要因が重なっていることもあれば、検査をしても明確な原因を特定できないこともあります。また、男性不妊には自覚症状がないことも少なくありません。普段の体調や性生活に特に問題を感じていなくても、精子の数や動き、精子をつくる機能などに変化が見つかることがあります。
不妊は、どちらか一方に責任を求めるものではありません。
妊娠までの過程には、卵子、精子、卵管、子宮など、男女双方の身体が関係します。「どちらに原因があるのか」と責めるのではなく、現在の状態を2人で確認し、必要な検査や治療を一緒に考えていくことが大切です。
一度妊娠・出産していても、不妊症になることがあります
「以前は自然に妊娠できたから、今回も大丈夫だと思っていた」
「1人目を出産しているので、自分は不妊症ではないと思う」
このように感じる方も少なくありません。しかし、過去に妊娠や出産を経験していても、その後に妊娠を希望して一定期間妊娠しない場合は、不妊症に当てはまることがあります。一般には「2人目不妊」と呼ばれることがありますが、医学的には「続発性不妊」と表現されます。
原発性不妊と続発性不妊
これまで一度も妊娠したことがない状態は、原発性不妊と呼ばれます。一方、過去に一度でも妊娠した経験があるものの、その後に妊娠を希望しても妊娠しない状態を、続発性不妊といいます。ここでいう妊娠経験は、出産に至った場合だけを指すものではありません。流産や子宮外妊娠などを含め、過去に妊娠が成立したことがある場合も、続発性不妊に分類されることがあります。
不妊症と不育症は、同じものではありません

不妊症と不育症は名前が似ていますが、困っている妊娠の段階が異なります。
不育症は、妊娠は成立するものの、流産や死産を繰り返し、妊娠を継続して出産に至ることが難しい状態です。現在の日本では、一般的に流産または死産を2回以上経験している状態を不育症とします。流産や死産が連続しているかどうかや、すでに出産した子どもがいるかどうかは問いません。
不妊症と不育症の両方が関係することもあります
不妊症と不育症は異なる状態ですが、必ずしも完全に分けられるとは限りません。たとえば、妊娠するまでに時間がかかり、妊娠後には流産を繰り返している場合には、不妊症と不育症の両方について検査や相談が必要になることがあります。
妊娠が成立しにくいのが不妊症、妊娠は成立するものの継続しにくいのが不育症です。ただし、実際には両方が重なっている場合もあるため、これまでの妊娠経過を含めて医師へ相談します。
不妊症は、決して珍しいことではありません
不妊について悩んでいても、身近な人には相談しにくく、「自分たちだけなのではないか」と感じることがあります。しかし、不妊の検査や治療を経験している夫婦は、決して少なくありません。こども家庭庁が2026年に公開した情報では、不妊の検査または治療を経験した夫婦は22.7%で、約4.4組に1組とされています。
これは、現在結婚している夫婦の4.4組に1組が、必ず不妊症であるという意味ではありません。過去も含めて、不妊の検査や治療を一度でも経験した夫婦の割合です。また、検査を受けていないものの、妊娠までに時間がかかって悩んでいる方もいます。

不妊症は、妊娠を希望しているにもかかわらず、一定期間妊娠が成立しない状態です。
排卵、精子、卵管、受精、着床など、妊娠が成立するまでの過程に何らかの問題が関係している場合があります。