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風邪をひいたときの漢方薬と市販薬の使い分け― 体が「治ろうとする流れ」をどう邪魔しないか ―

👉この記事でわかること!
  • なぜ風邪は「無理に止めない方がいい」と言われるのか
  • 熱・鼻水・咳が出る本当の意味
  • 風邪の引き始めに葛根湯が逆効果になるケース
  • 体の回復力を邪魔しない漢方の使い方

風邪をひいたとき、多くの方は市販の風邪薬を飲むと思います。それ自体は決して悪いことではありません。仕事を休めない、病院に行く時間がない。そんな現代において、市販薬はとても心強い存在です。ただ一方で、こんな経験はないでしょうか。

  • 熱は下がったのに、咳だけが残る
  • 鼻水は止まったけれど、だるさが抜けない
  • 治ったはずなのに、なんとなく長引いている感じがする

これはあくまで私自身の感覚、そして日々の臨床で感じていることですが、市販薬で症状を抑え込もうとすると、何か一部の症状だけが残って長引く。そういうケースをよく見かけます。

風邪が治ったはずなのに・・・

そもそも、風邪の症状とは何でしょうか。咳は、ウイルスや異物を外に出そうとする反応。鼻水は、粘膜で異物を絡め取って排出する反応。発熱は、体温を上げて免疫力を高める反応。つまり、風邪の症状は、体が治ろうとしているプロセスそのものです。

市販薬の多くは、これらの反応を「止める」ことで、つらさを和らげます。今を乗り切るためには、とても有効です。ただしそれは、体の防衛反応に一時的にブレーキをかけている状態とも言えます。

漢方の考え方は、少し違います。漢方では、どんな症状があるか以上に、体が今どういう状態なのかを重視します。例えば、

  • 悪寒があるか
  • 汗は出ているか、出ていないか
  • 発熱は強いのか、微熱程度なのか
  • 鼻水は水っぽいのか、黄色く粘っているのか
  • 咳は空咳か、痰が絡むのか
  • のどや胸に熱感があるか
  • 倦怠感や関節痛はあるか

これらの情報が分かるだけで、選ぶ漢方薬は大きく変わります。証(体の状態)が合えば、漢方薬は驚くほど効果を発揮することがあります。

ここで、ぜひ知っておいてほしい漢方薬があります。それが 桂枝湯(けいしとう) です。桂枝湯は、虚証で、すでに少し汗をかいている人に適するとされます。

  • 強い悪寒はない
  • うっすら汗が出ている
  • 発熱はあっても軽い
  • なんとなく体調がおかしい
  • 「風邪かも?」と気づき始めた段階

まさに、本格的にこじらせる前の「入り口」で使われる処方です。古典には、桂枝湯を服用した後に、薄めの、温かいお粥を食べるとよいと記されています。その理由は、水穀(食事)から得られるエネルギーを使って、中焦(胃腸)を補いながら、穏やかに発汗を助けるため。ここで大切なのは、桂枝湯は「強く汗を出す薬」ではない、という点です。桂枝湯は、

  • 体表の巡りを整える桂枝
  • 体を守る側を支える芍薬
  • 胃腸を補う大棗と甘草
  • 巡りを助ける生姜

これらが組み合わさり、防御がゆるんだ体を整えながら、やさしく外邪を追い出す処方になっています。つまり、体を消耗させず、無理に戦わず、自然な回復の流れを後押しする。それが桂枝湯の役割です。

ここで多くの方が疑問に思うのが、「風邪の引き始めなら葛根湯じゃないの?」という点です。葛根湯は、まだ汗が出ておらず、悪寒が強く、体力が比較的あるタイプに向いた処方です。葛根湯には、麻黄という強い発汗作用をもつ生薬が含まれています。これは、毛穴を一気に開き汗で邪を外に押し出すいわば「パワー型」の治し方です。一方、すでにうっすら汗が出ている虚証タイプでは、毛穴はすでに半分開いています。この状態で葛根湯を使うと、

  • 必要以上に発汗して体力を消耗する
  • 防御力をさらに弱めてしまう
  • 風邪は軽くなったのに、異常にだるさが残る
  • ぶり返しやすくなる

といった状態を招くことがあります。だからこそ、

「汗が出ていない引き始め」→ 葛根湯

「すでに汗が出始めている引き始め」→ 桂枝湯

という使い分けが重要になります。

風邪のときによく使われる漢方薬には、例えば次のようなものがあります。

  • 悪寒が強く、まだ汗が出ていないタイプ  → 葛根湯
  • 悪寒も発熱も強く、関節痛が目立つ体力のあるタイプ  → 麻黄湯
  • のどの痛みや熱感が前面に出ているタイプ  → 銀翹散
  • 水っぽい鼻水やくしゃみが多い冷えタイプ  → 小青竜湯
  • 黄色い痰や鼻水、咳と熱感があるタイプ  → 麻杏甘石湯
  • 風邪は治ったのに、空咳が長引く回復期  → 麦門冬湯
  • 倦怠感が強く、治りきらないエネルギー不足  → 補中益気湯

同じ「風邪」でも、体の状態が違えば、選ぶ薬はまったく変わります。

答えはシンプルです。どちらも正しい。目的が違うだけです。今を乗り切るためには市販薬。体を休め、根本から回復したいときには養生と漢方。そして、「何かだけ残って長引く」そんなときほど、体全体を見る視点が役に立ちます。

風邪は、体が弱った証ではなく、体がちゃんと働いている証です。その働きを、どう助けるか。どう邪魔しないか。そこに、漢方という選択肢があります。今回触れたそれぞれの漢方薬については、今後、一つずつ別の記事で、症例を交えながら、ゆっくり紹介していく予定です。「自分の体を知るきっかけ」として、このブログが役に立てば嬉しいです。

ABOUT US
koji(トレ​イン治療院 院長)はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師|国際中医専門員
大阪で治療院を開業して11年。 体は、その人の生き方や時間の積み重ねが静かに現れる場所だと感じています。 中医学を土台に、身体だけでなく心や生活の流れまで含めて整えていく。 そんな治療を大切にしています。 このブログでは、臨床の中での気づきや、体と向き合うための小さなヒントを、自分なりの言葉で書き残しています。 読んだ方の毎日が、少しでも軽くなれば嬉しい。
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