東洋医学臨床論
「72歳の男性。主訴は頻尿。難聴がある。トイレは我慢できるが、夜間に少量の尿失禁があり、前立腺肥大症と診断された。以前から腰が冷えてだるい。舌は淡、脈は弱を認める。」
病態として最も適切なのはどれか。
1 溢流性尿失禁
2 切迫性尿失禁
3 反射性尿失禁
4 腹圧性尿失禁
【解説】
国試レベルでは前立腺肥大=溢流性尿失禁でOK。
前立腺肥大症は,「前立腺の良性過形成による下 部尿路機能障害を呈する疾患で、通常は、前立腺腫大と下部尿路閉塞を示唆する下部尿路症状を伴う」 と定義されている。
前立腺肥大症の臨床経過は、第1期(膀胱刺激期)、第2期(残尿発生期)、第3期(慢性閉尿期)の3期に分けられ、出現する症状も異なる。
● 第1期(膀胱刺激期)
前立腺の肥大により、後部尿道が刺激される時期。夜間頻尿、尿道の不快感、圧迫感、尿意切迫感、遷延性排尿、苒延性排尿、など。
※ 遷延(せんえん)性排尿とは、尿が出始めるまでに時間がかかること。苒延(ぜんえん)性排尿とは、尿の出始めから終了までに時間がかかること。
● 第2期(残尿発生期)
膀胱の力だけではすべてを排出できなくなり、残尿が見られるようになる。また残尿に感染が起こり、膀胱炎などの尿路感染症が起こりやすくなる。
● 第3期(慢性閉尿期)
慢性的な尿閉となる。そのため、膀胱は過伸展の状態になり、不随意に尿が少量ずつ漏れるようになる(溢流性尿失禁)。また尿閉が続き、膀胱内圧が常に上昇すると、両側水腎症などが起こり、腎機能が低下する。
前立腺肥大症での排尿困難の原因である下部尿路通過障害は、2つの病態で形成される。
●前立腺平滑筋の過剰な収縮による機能的閉塞
アドレナリン作動神経と前立腺平滑筋内のα1アドレナリン受容体が関与
●肥大結節による機械的閉塞
前立腺組織内のジヒドロテストステロン関与
治療には、薬物療法(α1遮断薬、抗アンドロゲン薬、5α還元酵素阻害薬など)、経尿道的前立腺切除術などがある。
前立腺癌と前立腺肥大症の違いは頻発なので要チェック!
1◯溢流性尿失禁
2 切迫性尿失禁
急に尿意を覚えて、トイレに行こうとしても我慢ができずに途中で漏らしてしまう状態。脳血管障害、膀胱炎、尿管結石などで起こる。
3 反射性尿失禁
尿意がないのにもかかわらず、膀胱にある程度の尿がたまると膀胱収縮反射が不随意に引き起こされ、尿が漏れてしまう。上位の排尿中枢が損傷される脊髄損傷や脳障害などでみられる。
4 腹圧性尿失禁
日常の動作で腹圧がかかった時に尿が漏れる状態。女性の尿失禁の中で最も多い。加齢や出産を契機に出現。