問題 下記の中では、痢疾に対する治法でないものはどれか?
1.湿盛なら分利の方法で対応すべきである
2.初の痢に通の治法で対応すべきである
3.久痢に渋の治法で対応すべきである
4.便に赤が多いなら血薬を用いるべきである
5.便に白が多いなら気薬が多く用いるべきである
回答→1
【解説】
痢疾は、腹痛・裏急後重(排便後も便意が残る感覚)・赤白の膿血を伴う下痢を特徴とする病証です。その病理は、腸内に邪気(湿熱、疫毒など)が停滞し、気血を阻滞させて、腐敗したものが膿血として排出されることです。
1.湿盛なら分利の方法で対応すべきである
「分利」は、利尿と利便を同時に行うことで、体内の余分な湿を取り除く治法です。この方法は、主に泄瀉(単なる下痢)の湿盛タイプに用いられ、痢疾のような膿血を伴う病態には適していません。したがって、これが痢疾に対する治法ではありません。
2.初の痢に通の治法で対応すべきである
痢疾の初期は、邪気が盛んで気血が強く阻滞しているため、通法(調気活血)を用いて邪気を速やかに排出し、気の巡りや血の流れを良くすることが重要です。これにより、病邪がさらに深く侵入するのを防ぎます。
3.久痢に渋の治法で対応すべきである
痢疾が長引くと、体の正気が消耗し、肛門を固める力が失われます。この状態を久痢といい、この場合は渋法(収斂固渋)を用いて、下痢を止めることが必要です。
4.便に赤が多いなら血薬を用いるべきである
痢疾の便に「赤(膿血)」が多い場合は、血分が傷つけられていることを示しています。このため、和血の薬を多く用いて血脈を保護し、出血を止める必要があります。
5.便に白が多いなら気薬が多く用いるべきである
痢疾の便に「白(粘液)」が多い場合は、湿熱による気滞が腸内の脂絡を損傷している状態を反映しています。このため、調気(気の巡りを整える)の薬を多く用いて、気の流れを改善する必要があります。
痢疾の病理は湿熱や疫毒などが気血と搏結(結合)し、腸内の脂絡を傷つけることによって起こります。治療は、初期には通法、慢性期には渋法、そして赤白(膿血)の程度に応じて気薬や血薬を使い分けることが基本です。一方、「分利」は、湿邪が中心で膿血を伴わない泄瀉の治法であり、痢疾の治法としては不適切です。
問題 腹痛綿々、時作時止、喜温喜按、飢餓或いは疲労後に痛みが酷くなり、食事或いは休憩で痛みが緩和する。神疲、気短、怯寒、溏便、舌淡苔白、沈細脈を伴う。その治療方剤はどれか?
1.理中丸
2.良附丸
3.香蘇散
4.小建中湯
5.四君子湯
回答→4
【解説】
病名診断:腹痛
「腹痛綿々」が主症状であることから、病名診断は腹痛です。
証候診断:中虚臓寒
⚫︎虚証の証拠:
・腹痛綿々: 痛みが激しいのではなく、弱々しく続く(綿々)のは虚証の特徴です。
・喜按: 押さえると痛みが和らぐ(喜按)のも虚証の典型です。
・飢餓或いは疲労後に痛みが酷くなる: 虚弱な状態(飢餓、疲労)で痛みが悪化します。
・神疲、気短: 精神が疲れ、息が切れるのは、気が不足している(気虚)ことを示します。
⚫︎寒証の証拠:
・喜温: 温めると痛みが和らぐ(喜温)のは寒邪の特徴です。
・怯寒、溏便: 寒がりで、便がゆるい(溏便)のは、体内の陽気が不足していることを示します。
・舌淡苔白、沈細脈: 舌が淡く、苔が白く、脈が深く(沈)細いのは、虚と寒の典型的な舌脈です。
1.理中丸
脾胃虚寒による嘔吐や胃痛に用いる方剤です。小建中湯も脾胃を温めますが、小建中湯はより虚弱を補い、急な痛みを緩和する作用に優れています。
2.良附丸
寒邪客胃による実証の胃痛に用いる方剤です。本症例のような虚証の病態には適しません。
3.香蘇散
寒邪客胃による胃痛で、表証(風邪)を伴う場合に用います。
4.小建中湯
小建中湯は、中焦を温め、虚弱を補い、腹部の痙攣や痛みを和らげる作用に優れた方剤です。特に、甘味で痛みを緩和する膠飴が君薬として多量に配合されているのが特徴です。この方剤は、本症例の「腹痛綿々」「喜温喜按」などの症状に最も適しています。
5.四君子湯
脾気虚の虚弱を補う基本的な方剤です。温中作用や緩急作用は小建中湯に劣ります。
ポイント
⚫︎理中丸との使い分け
・理中丸は脾胃の陽虚による嘔吐や下痢が主の場合に用いられるのに対し、小建中湯は虚弱による腹痛が主症状である場合に用いられます。
問題 寒湿泄瀉で湿邪が重い者の治療に、まず選ぶべき方剤はどれか?
1.葛根芩連湯
2.藿香正気散
3.芍薬湯
4.胃苓湯
5.白頭翁湯
回答→4
【解説】
1.葛根芩連湯
湿熱泄瀉や湿熱痢疾の治療方剤です。本症例の寒湿の病態には適しません。
2.藿香正気散
湿邪も治療できますが、主に外邪感受の寒湿泄瀉に用いられます。本症例は「湿邪が重い」ため、より強力な袪湿作用を持つ胃苓湯がより適しています。
3.芍薬湯
湿熱痢の治療方剤です。寒湿の病態には適しません。
4.胃苓湯
胃苓湯は、五苓散と平胃散を組み合わせた合方です。五苓散は利水滲湿作用が強く、平胃散は燥湿健脾の働きを持ちます。この二つを合わせることで、湿邪を体外に排出し、同時に脾胃の運化機能を回復させるため、湿邪が重い寒湿泄瀉に最も適しています。また、痢疾の虚寒痢にも用いられます。
5.白頭翁湯
疫毒痢疾の治療方剤です。
※寒湿泄瀉の治療は軽症であれば藿香正気散で、表邪を解き、湿を化す治療を行います。
問題 患者、49歳。腹満して時に痛む、喜温喜按、体倦、大便溏稀、舌淡、苔薄白、脈細弱。この治療で選ぶべき方剤はどれか?
1.大建中湯
2.柴胡疏肝散
3.小建中湯
4.良附丸
5.呉茱萸丸
回答→3
【解説】
病名診断:腹痛
証候診断:中虚臓寒
1.大建中湯
中虚臓寒の腹痛を治療する方剤ですが、小建中湯よりもさらに重篤な病態に用いられます。嘔吐・四肢の冷え・脈微など、陰寒内盛の症状がある場合に選択されます。本症例はそこまで重篤ではないため、不適切です。
2.柴胡疏肝散
肝気鬱結による腹痛に用いる方剤です。本症例のような虚寒の病態には適しません。
3.小建中湯ー温中補虚、和裏緩急
小建中湯は、中虚臓寒の腹痛に最も適した方剤です。虚弱を補い、腹部の痙攣や痛みを緩和する作用に優れています。多量に配合された膠飴(飴)が、甘味で急な痛みを緩和する役割を果たします。
4.良附丸
寒邪が胃に侵入した実証の腹痛に用います。虚証の病態である本症例には不適切です。
5.呉茱萸丸
寒邪が肝経を侵す風寒頭痛の治療に用います。腹痛が主症状である本症例には適しません。
ポイント
⚫︎小建中湯と大建中湯の使い分け
・小建中湯: 虚弱が主で、腹痛が持続的だが比較的穏やかな場合に用います。
・大建中湯: 虚弱が進み、腹痛が激しく、嘔吐や四肢の冷えといったより重篤な症状を伴う場合に用います。
問題 患者、40歳。暴飲暴食により腹痛を誘発、噯腐呑酸、おならが出ると痛みは軽減、大便不暢、苔厚膩、脈滑。この治療で選ぶべき方剤はどれか?
1.良附丸
2.保和丸
3.大承気湯
4.小建中湯
5.以上どれも当てはまらない
回答→2
【解説】
病名診断:腹痛
「暴飲暴食により腹痛を誘発」が主症状であるため、病名診断は腹痛です。
証候診断:飲食停滞
患者の症状は、暴飲暴食によって飲食物が胃腸に停滞し、気の巡りを阻害している飲食停滞の病態を示しています。
⚫︎飲食停滞の証拠
・噯腐呑酸: げっぷが腐敗臭を帯び、酸っぱいものがこみ上げてくるのは、飲食物が消化されずに腐敗している特徴です。
・おならが出ると痛みは軽減: 気が鬱滞して腹痛が生じ、おならとして気が排出されると痛みが和らぐことから、気の鬱滞による腹痛であることがわかります。
・大便不暢: 便がスムーズに出ないのは、飲食物の停滞が腸の伝導機能を阻害していることを示します。
⚫︎舌脈
・苔厚膩: 舌苔が厚く、油っぽいのは、宿食や湿濁が停滞していることを示します。
・脈滑: 脈が滑らかで勢いがあるのは、飲食物が停滞していることを反映する脈です。
1.良附丸
寒邪客胃による胃痛に用いる方剤です。本症例は飲食が原因であり、寒邪による病態ではありません。
2.保和丸ー消食導滞和胃
保和丸は、飲食停滞による軽度から中程度の腹痛や胃痛、消化不良に用いる代表的な方剤です。本症例の腹痛は、「おならが出ると痛みが軽減」することから、比較的軽度な気の鬱滞が主であり、激しい痛みや便秘・下痢がないため、保和丸が適しています。
3.大承気湯
飲食停滞が重く、便秘がひどい場合(食積が化熱して燥となり、舌苔黄燥、拒按など)に用いる方剤です。本症例はそこまで重篤ではないため、不適切です。
4.小建中湯
中虚臓寒による腹痛に用いる方剤です。本症例は実証であり、虚証の病態には適しません。
ポイント
⚫︎飲食停滞の軽重鑑別
・軽症: 腹痛がそれほど激しくなく、便秘や下痢がない場合は、保和丸が適します。保和丸には、飲食物を消化する山楂子や、湿熱を清める連翹などが含まれています。
・重症: 腹痛が激しく、便秘や下痢を伴う場合は、枳実導滞丸などが検討されます。
問題 痢疾の初期に用いるべきでない薬はどれか?
1.疏散表邪の品
2.清熱涼血の品
3.調気行血の品
4.理気化滞の品
5.收斂止瀉の品
回答→5
【解説】
痢疾は、腹痛・裏急後重・赤白の膿血を伴う下痢を特徴とする病証です。特に発病初期は、邪気が盛んで、腸内に湿熱や疫毒などが停滞している実証と熱証が中心となります。
初期の治療の基本原則は、清熱化湿解毒を主とし、さらに調気行血導滞を併用して、速やかに邪気を体外に排出することです。
問題 痢疾の初期で表証を伴う。表邪未解だが、裏熱がすでに盛んでいる。腹痛、裏急後重、痢下赤白、肛門灼熱、身熱汗出、小便短赤、舌苔黄膩、脈滑数。治療でまず選ぶべき方剤はどれか?
1.芍薬湯
2.藿香正気散
3.葛根黄芩連湯
4.白頭翁湯
5.人参敗毒散
回答→3
【解説】
病名診断:痢疾
証候診断:湿熱痢疾兼表証
1.芍薬湯
湿熱痢の治療方剤ですが、表邪を解く作用はありません。
2.藿香正気散
外邪犯胃の嘔吐や寒湿泄瀉に用いる方剤です。本症例のような裏熱盛の病態には適しません。
3.葛根黄芩連湯
この方剤は、表邪が残る湿熱痢疾に最も適しています。君薬である葛根は、表邪を解きながらも、脾胃の清陽の気を昇発させて下痢を止めます。黄芩と黄連は強力な清熱燥湿作用を持ち、腸内の湿熱を取り除きます。これらの生薬の組み合わせにより、表裏両方の病態を同時に治療することが可能です。
4.白頭翁湯
疫毒痢疾の治療方剤です。本症例には疫毒の特徴的な症状(壮熱、神昏など)が見られません。
5.人参敗毒散
湿熱痢疾の初期で、発熱悪寒や頭身重痛などの表証を伴う場合に用いる方剤です。本症例は「身熱汗出」という表証であり、人参敗毒散の適応症とは異なります。
問題 患者、65歳。今日の午前に突然壮熱口渇、頭痛煩躁が現れ、その後昏迷し、腹痛、裏急後重、鮮紫膿血を下痢する、舌質紅絳、苔黄燥、脈滑数。診断すべきはどれか?
1.湿熱痢
2.寒湿痢
3.噤口痢
4.疫毒痢
5.どれも違う
回答→4
【解説】
⚫︎痢疾の共通症状: 「腹痛、裏急後重、鮮紫膿血を下痢する」は、下痢に膿血が混じり、腹痛や便意が残る感覚を伴う、痢疾の基本的な症状です。
⚫︎疫毒痢に特有の症状:
・発病の急激さ: 「今日の午前に突然」という発病の急驟さは、疫毒という強い邪気による発病を示唆します。
・全身の重篤な熱症状: 「壮熱口渇、頭痛煩躁」は、疫毒が体内に侵入し、清竅(頭部の感覚器官)を攻撃したり、心や血分を乱したりしている病理状態を反映しています。
・神志(精神)の異常: 「その後昏迷し」は、熱毒が心神を覆い、意識障害を引き起こしている重篤な状態です。
・舌脈: 「舌質紅絳、苔黄燥、脈滑数」は、体内の熱毒が非常に盛んであることを示す典型的な舌脈です。
・便の性状: 「鮮紫膿血」は、毒邪が腸道を強く灼傷し、気血を損傷していることを反映しています。
これらの特徴から、疫毒痢と診断できます。疫毒痢は、湿熱痢よりも発病が急で、全身症状が重篤であり、神志への影響が見られる点が異なります。
問題 腹痛が急に酷く現れる、得温痛減、遇寒更甚、口和不渇、溲清便溏、舌苔白膩、脈象沈緊。治療するために選ぶべき方剤はどれか?
1.附子理中丸
2.小建中湯
3.良附丸
4.良附丸合正気天香散
5.どれも違う
回答→4
【解説】
病名診断:腹痛
証候診断:寒邪内阻
患者の症状は、寒邪が体内に侵入して気の流れを阻害している寒邪内阻の病態を示しています。
⚫︎寒邪の証拠
・腹痛が急に酷く現れる: 急激な痛みは、寒邪による気の凝滞が原因であることが多いです。
・得温痛減、遇寒更甚: 温めると痛みが和らぎ、冷えると悪化するのは、寒邪の凝滞による典型的な症状です。
・口和不渇、溲清便溏: 口渇がなく、尿が澄んでいて、便がゆるいのは、体内に寒邪が盛んで、熱がないことを示します。
・舌苔白膩、脈象沈緊: 舌苔が白く膩(べったり)としており、脈が深く(沈)引き締まっている(緊)のは、寒凝と気の停滞を反映する典型的な舌脈です。
1.附子理中丸
脾腎陽虚による腹痛や虚寒痢に用いる方剤です。本症例のような急激な実証の腹痛には適しません。
2.小建中湯
中虚臓寒による虚証の腹痛に用いる方剤です。本症例は虚証ではなく実証です。
3.良附丸
寒邪による胃痛に用いる方剤ですが、単独では気の凝滞を改善する力が不十分な場合があります。
4.良附丸合正気天香散
寒邪による気の凝滞が腹痛の原因であるため、寒を散らす良附丸と、気を巡らせて痛みを止める正気天香散を組み合わせることで、病態に最も適した治療が可能です。
問題 泄瀉の初期における治療で適当でないものはどれか?
1.分利
2.消導
3.疏利
4.清化
5.固渋
回答→5
問題 一貫煎で脇痛を治療する効能はどれか?
1.疏肝理気
2.袪瘀通絡
3.清熱利湿
4.行気活血
5.養陰柔肝
回答→5
【解説】
一貫煎が適応する脇痛は、肝陰不足によるものです。
⚫︎病理: 肝の陰液が不足すると、肝を滋養することができなくなり、肝の機能が失調します。その結果、気の巡りも悪くなり、脇に痛みを引き起こします。
⚫︎特徴的な症状:
・陰虚の症状: 口や喉の乾燥、めまい、目がかすむ、舌が赤く苔が少ない、脈が細く速い(細弦数)といった症状を伴います。
・脇肋隠痛: 脇の痛みが激しいものではなく、シクシクと続く鈍い痛みです。
・疲労で痛みが悪化: 陰液不足による虚弱な状態のため、疲れると痛みがひどくなります。
⚫︎一貫煎の効能ー滋陰肝腎、疏肝理気
れは、肝の陰液を養い、肝の働きをなめらかにする養陰柔肝という治法に相当します。
問題 身目倶黄、黄色晦黯、食欲不振、精神疲労、畏寒、口渇はない、大便は堅くない、舌淡苔膩、脈濡緩。その治療方剤はどれか?
1.茵蔯蒿湯
2.茵蔯五苓散
3.茵蔯朮附湯
4.麻黄連翹赤小豆湯
5.梔子柏皮湯
回答→3
【解説】
病名診断:黄疸
「身目倶黄」という症状から、病名診断は黄疸です。
証候診断:陰黄
黄疸の弁証では、まず陽黄と陰黄を鑑別することが重要です。患者の症状は陰黄の特徴を多く示しています。
⚫︎陰黄の証拠
・黄色晦黯: 黄疸の色が鮮やかではなく、くすんで暗い色をしています。これは陰黄の最も特徴的な症状です。
・畏寒、口渇はない、大便は堅くない: これらは体内に寒湿が盛んで、熱がないことを示しています。
・食欲不振、精神疲労: 寒湿が脾胃を阻滞し、脾胃の運化機能が低下していることを示唆します。
・舌淡苔膩、脈濡緩: 舌が淡く、苔が膩(べったり)としており、脈が濡(じゅ、浮いて柔らかい)で緩いのは、寒湿内盛の典型的な舌脈です。
これらの症状を総合すると、陰黄と診断できます。陰黄の病理は、寒湿が脾胃を阻滞し、陽気の宣降(せんだい)を失調させることで、胆汁が体表に溢れ出ることにあります。
1.茵蔯蒿湯
熱が湿よりも重い熱重於湿の陽黄の治療方剤です。本症例のような寒湿の病態には適しません。
2.茵蔯五苓散
湿が熱よりも重い湿重於熱の陽黄の治療方剤です。本症例の陰黄には不適切です。
3.茵蔯朮附湯ー温陽健脾、利湿退黄
茵蔯朮附湯は、陰黄の治療に特化した方剤です。附子、乾姜、肉桂で陽気を温め、白朮で脾を健やかにし湿を取り除き、茵蔯蒿で黄疸を退散させます。これらの生薬の組み合わせにより、寒湿内盛による黄疸を根本から治療します。
4.麻黄連翹赤小豆湯
陽黄の初期で、表証を伴う場合に用いる方剤です。
5.梔子柏皮湯
陽黄の初期で、清熱利湿作用を強めるために用いる方剤です。
問題 患者、男、54歳。目黄身黄、その色は鮮明、発熱口渇し、心中が悶乱して不寧(心中懊憹)、悪心嘔吐、小便短少で黄、大便秘結、舌苔黄膩、脈弦数。この治療で選ぶべき方剤はどれか?
1.茵陳五苓散
2.茵陳蒿湯
3.甘露消毒丹
4.犀角散
5.大柴胡湯
回答→2
【解説】
病名診断:黄疸
「目黄身黄」という症状から、病名診断は黄疸です。
証候診断:陽黄・熱重於湿
患者の症状は、湿熱が体内に停滞する陽黄の中でも、特に熱が湿よりも盛ん(熱重於湿)な病態を示しています。
⚫︎陽黄の証拠
・黄色鮮明: 黄疸の色がくすんでおらず、鮮やかです。
・発熱口渇: 体内の熱が盛んであることを示します。
・大便秘結: 熱が津液を消耗させ、腸の働きを阻害しているためです。
・小便短少で黄: 湿熱が膀胱の気化を妨げ、水分代謝を悪化させています。
・舌苔黄膩、脈弦数: 舌苔が黄色く膩(べったり)としており、脈が速いのは、湿熱が盛んであることを示す典型的な舌脈です。
⚫︎熱重於湿の鑑別
陽黄には「熱重於湿」と「湿重於熱」があります。本症例では、「発熱口渇」「大便秘結」といった熱の症状が顕著であるため、熱重於湿と判断できます。一方、湿が重い場合は、頭が重く体がだるい、下痢や便が軟便であるといった症状が多く見られます。
1.茵陳五苓散
湿が熱よりも重い湿重於熱の陽黄に用いる方剤です。本症例の熱が重い病態には適しません。
2.茵陳蒿湯
茵陳蒿湯は、熱重於湿の陽黄に特化した代表的な方剤です。君薬の茵陳蒿で黄疸を退散させ、山梔子で熱を清め、大黄で便通を改善して熱と湿を体外へ排出します。これにより、体内の湿熱を根本から取り除きます。
3.甘露消毒丹
湿重於熱の陽黄に、茵陳五苓散と併用して用いることがあります。
4.犀角散
急黄(黄疸が急激に発症し、重篤な熱症状を伴う)や熱毒が血分に侵入した病態に用いる方剤です。
5.大柴胡湯
胆石など、胆道が塞がれたことによる病態に用いることがあります。
問題 身目倶黄、黄色鮮明、発熱口渇、口乾苦、脘腹脹満、悪心嘔吐、小便短少、色は赤黄で、大便秘結、舌苔黄膩、脈弦数。その治療方剤はどれか?
1.茵蔯蒿湯
2.茵蔯五苓散
3.茵蔯朮附湯
4.麻黄連翹赤小豆湯
5.梔子柏皮湯
回答→1
【解説】
1.茵蔯蒿湯
熱重於湿の陽黄に最も適した方剤です。
2.茵蔯五苓散
湿が熱よりも重い湿重於熱の陽黄に用いる方剤です。本症例の熱が重い病態には適しません。
3.茵蔯朮附湯
陽黄とは対照的な陰黄の治療方剤です。
4.麻黄連翹赤小豆湯
陽黄の初期で、表証を伴う場合に用いる方剤です。
5.梔子柏皮湯
陽黄の初期で、清熱利湿作用を強めるために用いる方剤です。
問題 脇肋の隠痛が長々と続く、痛みは疲れると悪化する、口乾咽燥、心中煩熱、頭暈目眩、舌紅少苔、脈細弦数。選ぶべき方剤はどれか?
1.旋覆花湯
2.柴胡疏肝散
3.一貫煎
4.帰脾湯
5.復元活血湯
回答→3
【解説】
病名診断:脇痛
証候診断:肝陰不足
患者の症状は、肝の陰液が不足している肝陰不足の病態を示しています。
⚫︎脇痛の特徴
・「隠痛が長々と続く」という、弱々しく持続的な痛みは虚証の特徴です。「痛みは疲れると悪化する」というのも、肝陰が不足して虚弱な状態であることを示唆します。
⚫︎陰虚の症状
・口乾咽燥、心中煩熱: 陰液の不足により、口や喉が乾燥し、体内の虚熱が原因で胸が煩わしく熱感を覚えます。
・頭暈目眩: 肝陰が不足して肝血が虚弱になると、頭や目を滋養できなくなり、めまいや目のかすみが生じます。
・舌紅少苔、脈細弦数: 舌が赤く、苔が少ないのは陰虚の典型的な舌象です。脈が細く(虚)、弦(肝の病)、速い(熱)のも、肝陰不足による虚熱を示しています。
1.旋覆花湯
瘀血停着による脇痛の治療方剤です。本症例の症状とは異なります。
2.柴胡疏肝散
肝気鬱結による脇痛の治療方剤です。痛みは脹痛が主で、情緒変動で悪化します。
3.一貫煎
肝陰不足による脇痛に最も適した方剤です。一貫煎は、大量の補陰薬(生地黄、枸杞子、沙参、麦門冬、当帰)に少量の疏肝理気薬(川楝子)を配合することで、陰液を補いながらも気の鬱滞を取り除くという特徴的な作用を持ちます。
4.帰脾湯
気血虧虚による心悸や不眠、脾不統血など、脾や心の病態を治療する方剤です。
5.復元活血湯
瘀血停着による脇痛で、痛みが激しい場合に用いる方剤です。
問題 下記の中で、陽黄と陰黄との鑑別要点でないものはどれか?
1.病程は比較的に長いか短いか
2.黄色が鮮明か晦暗か
3.小便が黄色か黄色ではないか
4.熱証か寒証か
5.虚証か実証か
回答→3
【解説】
陽黄と陰黄を鑑別する際には、黄疸の色の鮮やかさ、病程の長短、そして付随する熱症状(陽黄)と寒症状(陰黄)の有無を判断することが重要です。小便が黄色くなることは両者に共通する症状であるため、鑑別要点にはなりません。
問題 患者、脇肋が脹満して痛む、痛処不定、怒ると悪化、胸悶し善太息、噯気が頻発、苔薄白、脈弦。この治療で選用すべき治法はどれか?
1.疏肝理気
2.袪瘀通絡
3.清熱利湿
4.清熱利胆
5.養陰柔肝
回答→1
【解説】
患者の症状は、肝の気の流れが滞っている肝気鬱結の病態を示しています。
問題 外傷による血瘀による脇痛の治療に、選ぶべき方剤はどれか?
1.桃紅四物湯
2.血府逐瘀湯
3.復元活血湯
4.身痛逐瘀湯
5.補陽還五湯
回答→3
【解説】
1.桃紅四物湯
内科学では使用されていない方剤
2.血府逐瘀湯
心血瘀阻の胸痺、瘀血による発熱などに用いる方剤です。
3.復元活血湯
外傷による激しい脇痛、すなわち瘀血停着の脇痛に最も適した方剤です。内科学では瘀血停着の脇痛が酷い場合の治療方剤で、方剤学では打撲損傷で瘀血が脇下に溜り我慢できないほど脇痛を治療する方剤である
4.身痛逐瘀湯
瘀血停着による腰痛の治療方剤です。
5.補陽還五湯
中風の後遺症による半身不随など、気虚と血瘀が原因の病態に用いる方剤です。
問題 患者、女、39歳。身目どちらも発黄し、身体全体が不調、頭重四肢がだるい、口淡不渇、腹脹納呆、小便不利、便溏、舌苔厚膩、脈弦滑。この治療で選ぶべき方剤はどれか?
1.王氏連朴飲
2.五味消毒飲
3.甘露消毒丹
4.茵陳朮附湯
5.茵陳五苓散
回答→5
【解説】
病名診断:黄疸
「身目どちらも発黄し」という症状から、病名診断は黄疸です。
証候診断:陽黄・湿重於熱
この症例は、黄疸の中でも陽黄に属し、特に湿邪が熱邪よりも重い(湿重於熱)病態を示しています。
1.王氏連朴飲
内科学では使用されていません。
2.五味消毒飲
陽水の湿毒や、熱毒による皮膚疾患(瘡瘍、癰疽)に用いる方剤です。
3.甘露消毒丹
湿重於熱の陽黄の治療に、茵陳五苓散と併用して用いられる方剤です。
4.茵陳朮附湯
陰黄の治療方剤です。本症例の陽黄には不適切です。
5.茵陳五苓散
茵陳五苓散は、湿重於熱の陽黄に特化した方剤です。茵陳蒿で黄疸を退散させ、五苓散で利水作用を高めることで、体内の湿邪を強力に排出します。
問題 脇肋の隠痛が長々と続く、痛みは疲れると悪化する、口乾咽燥、心中煩熱、頭暈目眩、舌紅少苔、脈細弦数。選ぶべき方剤はどれか?
1.旋覆花湯
2.柴胡疏肝散
3.一貫煎
4.帰脾湯
5.復元活血湯
回答→3
【解説】
病名診断:脇痛
証候診断:肝陰不足
1.旋覆花湯
瘀血停着による脇痛の治療方剤です。本症例の虚証の症状とは異なります。
2.柴胡疏肝散
肝気鬱結による脇痛の治療方剤です。痛みは張ったような痛みで、情緒変動で悪化します。
3.一貫煎
肝陰不足による脇痛に最も適した方剤です。
4.帰脾湯
気血不足による心脾両虚の病態に用いる方剤です。
5.復元活血湯
瘀血停着による激しい脇痛の治療方剤です。
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