臨床医学各論
次の文で示す症例について、問いに答えよ。
「55歳の男性。強度近視。夕方デスクワーク中、右眼で黒く動く小さな糸くず状のものが見えた。」
問題① 該当する症状はどれか。
1.霧視
2.複視
3.飛蚊症
4.光視症
問題② 次第に症状は悪化し、右眼で下から上へ視野欠損も生じてきた。考えられる疾患はどれか。
1.緑内障
2.白内障
3.網膜剥離
4.網膜色素変性症
②回答→3
【①解説】
1.霧視
目が霞んで見える現象。屈折異常、加齢黄斑変性、白内障、糖尿病網膜症などで現れることがある。
2.複視
一つの物が二重に見える現象。複視には単眼性と両眼性があり、単眼複視は片方の眼を開けているときだけ起こり、両眼複視は片方の眼を閉じれば消失する。単眼性の場合は乱視や白内障などが原因となり、両眼複視は眼球の動きを支配する動眼神経・滑車神経・外転神経などの運動神経の障害による場合がある。
3.飛蚊症
外界に対応する物がないにもかかわらず、視界にほこりや糸くずのようなものが見える現象。原因として、網膜剥離、網膜の裂け、硝子体への出血や炎症などがある。
4.光視症
外界に対応する光源がないにもかかわらず、チカチカする光、明滅する光、または光の線が見えるように感じる現象。原因として、網膜剥離、網膜の裂け、硝子体への出血や炎症などがある。
【②解説】
1.緑内障
眼圧が亢進して視神経が障害され、視野障害がさらに進行すると失明に至る一連の疾患群である。最近では眼圧が高くない緑内障のあることもわかっている。国試では失明の原因の第2位が緑内障であることもポイント。(第1位は糖尿病網膜症)
症状としては視野障害と視力障害が起きる。また眼圧が急速に上昇する緑内障急性発作の場合には、眼痛、頭痛、嘔気、嘔吐、霧視、充血などが起きる。
2.白内障
白内障は水晶体がさまざまな原因で混濁した状態の疾患である。加齢よるものが多いが、糖尿病やアトピーなどの全身性疾患や虹彩炎、網膜色素変性症などの眼内疾患に併発したり、外傷や先天性に発病することもある。症状としては、視力障害が徐々に起き、まぶしく感じること(羞明)もある。白内障は、細隙灯顕微鏡検査で水晶体の混濁が確認できる。
3.網膜剥離
網膜剥離には裂孔原性、牽引性、滲出性があり、いずれも感覚網膜がその下の網膜色素上皮層から分離する状態である。頻度が高いのは裂孔原性網膜剥離である。
網膜剥離は無痛性で、裂孔原性網膜剥離の初期症状としては、濃いまたは不整形の硝子体浮遊物、閃光(光視症)、霧視などがある。剥離が進行すると、患者は「眼の中にカーテンが引かれたように感じ」を自覚したり、視野が薄暗いと感じることが多い。
4.網膜色素変性症
網膜色素変性は、徐々に進行する両眼性の網膜および網膜色素上皮の変性であり、その原因は様々な遺伝子変異である。初期症状としては、夜盲と視野狭窄を自覚し、徐々に進行して社会的失明(矯正視力約0.1以下)となる例も多い。現時点では治療法が確立されていない。
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