東洋医学臨床論
次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
「43歳の男性。主訴は咳嗽。仕事が忙しくなると発作的にせき込む。痰が切れにくく、咽頭部に違和感があり、胸脇部が張る。舌は紅、脈は弦数を認める。」
1 腎陰を補う
2 肺気を補う
3 肝火を抑える
4 痰濁を除く
回答→3
【解説】
まず、主訴は咳嗽なので病位が肺にあるのは分かる。では、病因病機を考えてみよう。とりあえずキーワードの掘り出しから。
[キーワード]
・咳嗽→ 肺
・仕事が忙しくなると→ 肝
・痰が切れにくい→ 湿
・咽頭部に違和感→ 肝(梅核気)
・胸脇部→ 肝の経脈
・張痛→ 気滞
※胸脇部の張痛→ 肝鬱気滞
・紅舌→ 熱証(実熱や虚熱)
・弦脈→ 肝胆病、痛証、痰飲
・数脈→ 熱証
私の考えでは、患者は肺虚の素因があり、仕事の忙しさから肝鬱気滞証となり、肝火上炎(肝鬱化火)へと移行し、その熱が肺を損傷して肺の粛降機能が低下し咳嗽を起こした(肝火犯肺)と考える。よって選択肢の中では「肝火を抑える」が最も適切といえる。因みに肝火犯肺への治法は「清肝瀉肺」である。