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香りとともに行う養生について— 瞑想・お灸・香灸静坐 —

薬香は、ただ香りを楽しむためだけのものではありません。

香りには、意識を「今ここ」に戻す力があります。

考えすぎているとき。

気持ちが先へ先へと向かっているとき。

香りは、頭で整理しようとするよりも先に、身体の感覚に働きかけてくれます。

その性質を活かし、薬香を焚きながら行う少し深い養生法があります。

薬香を焚きながら行う「静かな瞑想」

特別なことをする必要はありません。

  1. 薬香を焚き、香りを感じます
  2. 背筋を軽く伸ばして座ります
  3. 呼吸に意識を向けます

吸う息・吐く息とともに、香りが身体に広がるのを感じてください。

考えを止めようとしなくて大丈夫です。

集中しようとしなくても構いません。

香りと呼吸に戻る。

それだけで十分です。

この方法は、

  • 緊張や不安が強いとき
  • 考えごとが止まらないとき
  • 寝る前の静かな時間

に向いています。

なぜ「瞑想」が養生として勧められているのか

— 科学的な視点から —

瞑想は、忙しい人ほど後回しにされやすいものかもしれません。

  • 本当に効果があるのかわからない
  • 何をしているのかよくわからない
  • 正しくできているのか不安

そう感じるのは、とても自然なことです。

しかし近年、瞑想(特にマインドフルネス瞑想)が精神的な健康に役立つことは、多くの研究で示されています。

研究でわかってきていること

瞑想を一定期間続けることで、

  • ストレス反応が穏やかになる
  • 不安や緊張が和らぐ
  • 気分の落ち込みが軽減する
  • 思考のループに巻き込まれにくくなる

といった変化が報告されています。

これは、「考えを消す」ことによる効果ではありません。

自分の思考や感情に気づき、距離を取れるようになることが関係していると考えられています。

また、脳の働きに関する研究では、

  • 感情反応に関わる部位の過剰な反応が落ち着く
  • 自己調整に関わる領域が働きやすくなる

といった変化が示唆されています。

忙しい人ほど「香り」が助けになる理由

瞑想がつらく感じる方の多くは、

  • 頭の中が忙しい
  • じっとしていると考えがあふれてくる

という状態にあります。

薬香は、このような方にとって身体感覚へ戻るための“手がかりになります。

香りを感じることで、

  • 思考から感覚へ意識が移りやすくなる
  • 呼吸に戻りやすくなる
  • 「今ここ」に留まりやすくなる

その結果、瞑想が無理のない養生として成立しやすくなります。

薬香を焚きながら行うお灸

お灸もまた、火を使った養生です。

薬香を焚きながらお灸をすると、

  • 空間が自然と静まる
  • 呼吸が深くなる
  • 身体の感覚に意識が向きやすくなる

といった変化が起こりやすくなります。

おすすめは、足・お腹・腰まわりなど、刺激の少ない場所。

お灸の熱と香りを感じながら、「効かせよう」とせず、ただ感じる時間として行ってください。

薬香・お灸・瞑想を組み合わせる

— 香灸静坐という養生 —

薬香・お灸・瞑想は、それぞれ別のもののように見えて、実はとても相性の良い養生法です。

香りが空間と呼吸を整え、お灸が身体の感覚を呼び戻し、静かに座ることで、今の自分の状態に気づきやすくなります。

このように、薬香・お灸・静かな呼吸を組み合わせた養生を、香灸静坐(こうきゅうせいざ) と呼んでいます。

難しい修行ではありません。

  1. 薬香を焚く
  2. 足やお腹にお灸をする
  3. 呼吸を感じながら静かに座る

それだけです。

身体だけでなく、心の疲れにも、やさしく働きかけます。

少しだけ、注意していただきたいこと

香灸静坐は、少しレベルの高い養生法です。

以下の点を大切にしてください。

  • 無理をしない
  • 換気をしながら行う
  • 体調が悪いときは行わない
  • 「気持ちいい」と感じる範囲で止める

養生は、頑張るものではありません。

もし不安がある場合は、治療院でご相談ください。

治療と養生のあいだに

治療は、身体を整えるための時間。

養生は、整った状態を保つための時間。

薬香を使った養生は、その橋渡しです。

特別なことをしなくても、静かに香りを焚くだけで、身体は少しずつ変わっていきます。

補足

お灸をしながら行う瞑想については、以前「瞑想灸」という形で別の記事にまとめています。

香灸静坐に興味を持たれた方は、あわせてご覧ください。

▶︎ 瞑想灸についての記事はこちら

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