薬香は、ただ香りを楽しむためだけのものではありません。
香りには、意識を「今ここ」に戻す力があります。
考えすぎているとき。
気持ちが先へ先へと向かっているとき。
香りは、頭で整理しようとするよりも先に、身体の感覚に働きかけてくれます。
その性質を活かし、薬香を焚きながら行う少し深い養生法があります。
もくじ
薬香を焚きながら行う「静かな瞑想」

特別なことをする必要はありません。
吸う息・吐く息とともに、香りが身体に広がるのを感じてください。
考えを止めようとしなくて大丈夫です。
集中しようとしなくても構いません。
香りと呼吸に戻る。
それだけで十分です。
この方法は、
に向いています。
なぜ「瞑想」が養生として勧められているのか
— 科学的な視点から —
瞑想は、忙しい人ほど後回しにされやすいものかもしれません。
そう感じるのは、とても自然なことです。
しかし近年、瞑想(特にマインドフルネス瞑想)が精神的な健康に役立つことは、多くの研究で示されています。
研究でわかってきていること
瞑想を一定期間続けることで、
といった変化が報告されています。
これは、「考えを消す」ことによる効果ではありません。
自分の思考や感情に気づき、距離を取れるようになることが関係していると考えられています。
また、脳の働きに関する研究では、
といった変化が示唆されています。
忙しい人ほど「香り」が助けになる理由
瞑想がつらく感じる方の多くは、
という状態にあります。
薬香は、このような方にとって身体感覚へ戻るための“手がかり”になります。
香りを感じることで、
その結果、瞑想が無理のない養生として成立しやすくなります。
薬香を焚きながら行うお灸
お灸もまた、火を使った養生です。
薬香を焚きながらお灸をすると、
といった変化が起こりやすくなります。
おすすめは、足・お腹・腰まわりなど、刺激の少ない場所。
お灸の熱と香りを感じながら、「効かせよう」とせず、ただ感じる時間として行ってください。
薬香・お灸・瞑想を組み合わせる
— 香灸静坐という養生 —
薬香・お灸・瞑想は、それぞれ別のもののように見えて、実はとても相性の良い養生法です。
香りが空間と呼吸を整え、お灸が身体の感覚を呼び戻し、静かに座ることで、今の自分の状態に気づきやすくなります。
このように、薬香・お灸・静かな呼吸を組み合わせた養生を、香灸静坐(こうきゅうせいざ) と呼んでいます。
難しい修行ではありません。
それだけです。
身体だけでなく、心の疲れにも、やさしく働きかけます。
少しだけ、注意していただきたいこと
香灸静坐は、少しレベルの高い養生法です。
以下の点を大切にしてください。
養生は、頑張るものではありません。
もし不安がある場合は、治療院でご相談ください。
治療と養生のあいだに
治療は、身体を整えるための時間。
養生は、整った状態を保つための時間。
薬香を使った養生は、その橋渡しです。
特別なことをしなくても、静かに香りを焚くだけで、身体は少しずつ変わっていきます。
補足
お灸をしながら行う瞑想については、以前「瞑想灸」という形で別の記事にまとめています。
香灸静坐に興味を持たれた方は、あわせてご覧ください。
▶︎ 瞑想灸についての記事はこちら




