解剖学
心臓について正しいのはどれか。
1 動脈弁は三尖弁である。
2 腱索は心房にある。
3 刺激伝導路は交感神経が構成する。
4 ヒス束は線維三角を貫通する。
【解説】
1 動脈弁は半月弁である。
左房室弁ー二尖弁(僧帽弁)
右房室弁ー三尖弁
右後方の大動脈の基部ー大動脈弁(半月弁)
左前方の肺動脈の基部ー肺動脈弁(半月弁)
2 腱索は心室にある。
心室に存在する筋性隆起の肉柱が伸びて乳頭筋となり、その乳頭筋の先端から腱索という結合組織となって弁尖に固定されている。
3 刺激伝導路は特殊心筋線維が構成する。
心臓の刺激伝導路を構成するのは神経線維ではなく、特殊心筋線維である。特殊心筋線維は一般の心筋線維よりも太くて細胞質に富むが、筋原線維は少ないという特徴を持ち、心筋の収縮を興奮として伝えていく性質がある。また、心筋はギャップ結合により電気的な興奮が細胞間で容易に伝わりる。そのため、多数の細胞から構成される心房・心室はあたかも1個の細胞のように機能する。これを機能的合胞体という。
4◯ヒス束は線維三角を貫通する。
刺激伝導系は部位によって、洞房結節、房室結節、結節間路、ヒス束、脚、プルキンエ線維に分けられる。
・洞房結節
心臓拍動の起点となり、興奮のリズムが心房全体に伝えられて心房の収縮をうながし、次の房室結節、房室束(ヒス束)を経て心室に伝わる。このように房室結節は心臓の収縮リズムのペースメーカー(歩調とり)として機能する。この結節には交感神経と副交感神経 (迷走神経)が分布する。前者は洞房結節が発する興奮のテンポを速め、後者はテンポを遅するように調節する。
・房室結節(田原の結節)
右心房の下壁にある特殊心筋線維の密な塊である。洞房結節を発して右心房壁を伝わつた興奮がここで中継され、さらに房室束を経由して心室に伝わる。
・ヒス束(房室束)
心房と心室とを連絡する特殊心筋線維の束である。房室弁の周囲を固定する線維三角を貫通して心室中隔に達し右脚と左脚に分かれる。
・プルキンエ線維
心室中隔を下行した右脚と左脚は、それぞれ右心室と左心室の壁で刺激伝導系の終末であるプルキンエ線維となり、心内膜下を細かく分枝しながら網の目のように走る。プルキンエ線維の末端は一般の心筋に移行して、興奮を心室全体に伝える。