
皆さん、突然ですが、こんな経験はありませんか?
忙しい一日が終わり、ようやく家で一息つこうとしたその時、うっかり机の角に小指をぶつけてしまった!鋭い痛みに思わず患部を押さえ、その後はジンジンと鈍い痛みが…。でも、数分もすると、あの激しい痛みはどこへやら、すっかり消えてしまった。

なぜ、痛みは消えたのでしょう?「ぶつけたのが一瞬だから、当たり前だ」と思っていませんか?確かに刺激がなくなったことも大きいですが、実はこれ、「痛みのシグナルを抑制する働き」が関係しているんです。私たちの体には、痛みを引き起こす物質だけでなく、痛みを和らげる物質も存在しています。
そもそも、小指をぶつけた直後の激しい痛みから、最終的に痛みが消えるこのプロセスには、私たちの体が持つ素晴らしい痛みの抑制システムが関わっています。 例えば、痛む部分を思わずさすると痛みが和らぐのは、神経の「門(ゲート)」を閉じて痛みの信号を脳に伝わりにくくする体の仕組み(ゲートコントロール理論)が働いているから。また、強い痛みに対して、脳内でモルヒネのような鎮痛作用を持つ「エンドルフィン」などの物質が分泌され、痛みを和らげようとすることもあります。このように、私たちの体は痛みを調整し、抑え込む力を本来持っているんです。
痛み止め、どうして効くの?
皆さんも一度は痛み止めを使ったことがあるのではないでしょうか。ロキソニンやEVEなど、市販薬でもおなじみの「NSAIDs(エヌセイズ)」と呼ばれる種類の痛み止めは、どのようにして痛みを軽減するのでしょう?
NSAIDsは、体内で痛みの原因となる物質(プロスタグランジン)が作られるのを抑えることで、痛みを和らげます。つまり、炎症を抑え、痛みのシグナルを減少させることで効果を発揮するんです。
しかし、NSAIDsには副作用がつきものです。プロスタグランジンは胃の粘膜を守ったり、腎臓の血流を維持したりする役割も担っているため、NSAIDsの服用によって胃腸障害や腎機能への負担、出血傾向のリスクなどが考えられます。また、炎症を伴わない痛みには効果が出にくい場合もあります。
血行不良が「痛み」を引き起こすメカニズム
肩こりや腰痛など、慢性的な痛みを感じる方の多くは、患部の血行不良を抱えていることが多いです。では、なぜ血行が悪くなると痛みが生じるのでしょうか?
私たちの体は、血液に乗って酸素や栄養を細胞に届け、老廃物を回収しています。ところが、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けたり、ストレスや冷えなどで筋肉が緊張したりすると、血管が圧迫されて血流が悪くなります。
血行不良になると、以下の悪循環が生じ、痛みが慢性化してしまいます。
このように、血行不良は痛みの原因となり、また痛みが血行不良を悪化させるという悪循環を生み出すんです。

慢性痛には特に!鍼灸のすごい鎮痛効果

「痛み止めを飲んでも痛みが治まらない…」もしそう感じているなら、それは炎症が治まっているにもかかわらず、痛みだけが残ってしまっているケースかもしれません。
長期にわたる痛みは、神経が過敏になり、わずかな刺激でも「痛み」として認識してしまう「中枢性感作」という状態を引き起こすことがあります。さらに、脳の中で痛みが悪化したり、作り出されたりすることもあります。このようなタイプの痛みには、抗炎症作用のあるNSAIDsでは効果が出にくいことがあります。
ここで皆さんに一番知ってほしいのが、鍼灸(しんきゅう)の鎮痛効果です。
鍼灸は、世界的な公的機関にもその効果が認められており、その痛みを和らげるメカニズムも科学的に解明されつつあります。薬とは異なるアプローチで痛みに働きかけるため、薬では対応しきれない痛みにも効果を発揮する可能性を秘めているんです。
特に、慢性的な痛みに対しては、鍼灸が非常に効果的です。痛み止めの薬が、主にプロスタグランジンという単一の物質にアプローチするのに対し、鍼灸は多角的に痛みに働きかけます。具体的には、
このように、鍼灸は痛みの根本的な原因にアプローチし、身体が本来持っている自然治癒力を高めることで、痛みを和らげるだけでなく、身体全体の調子を整える「おまけ」がたくさんついてくるのが大きなメリットなんです。
鍼灸の効果を最大限に引き出すために
鍼灸は慢性的な痛みに非常に有効ですが、短期的な治療ではなかなか大きく効果を実感しにくい場合があります。大切なのは、良い状態を長く維持することです。
痛みのメカニズムは複雑であり、長年の不調が積み重なって慢性化しているケースも少なくありません。そのため、鍼灸の効果を最大限に引き出し、痛みのない良い状態を安定させるためには、定期的に継続して治療を受けることが非常に重要です。
薬で痛みが取れないとお悩みの方、副作用が心配な方、そして根本から痛みを改善したい方は、ぜひ一度、鍼灸治療を試してみてはいかがでしょうか?
補足ですが、私たちは西洋医学を否定するものではありません。痛み止めなどの薬は、その効果や即効性において非常に重要な役割を果たします。しかし、薬だけでは手の届かない部分、例えば慢性的な痛みの根本原因や、心身のバランスの乱れといった部分にアプローチできるのが、鍼灸をはじめとする東洋医学の強みです。西洋医学と東洋医学、それぞれの得意分野を理解し、適切に組み合わせることで、より効果的な痛みのケアが可能になると私たちは考えています。
鍼灸師にお任せください!
鍼灸治療は、当然ながら鍼灸師の国家資格を持つ者、あるいは医師や歯科医師のみが行うことができます。しかし、実際に鍼灸を行う医師や歯科医師は少ないのが現状です。
これは、医師や歯科医師は多忙であることに加え、鍼灸の専門的な知識や技術を習得する機会が少ないためです。だからこそ、私たち鍼灸師の専門性が生きてくるんです。
薬の販売資格も持つ私、新部が解説する通り、痛み止めと鍼灸では痛みを和らげる作用機序が異なります。痛みにお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。あなたの痛みに寄り添い、最適な治療法をご提案させていただきます。

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