臨床医学総論
正常肺野で聴取される低調性の打診音はどれか。
1 ラ音
2 静音
3 濁音
4 鼓音
【解説】
肺・胸膜の診察には触診、打診、聴診がある。本題は打診についての問題である。
[肺の打診について]
肺の打診では右鎖骨中線上で胸部を上から下へ打診し、まず肺肝境界を確認し、肺下界を決定する。また、左鎖骨中線上で、胸部を上から下へ打診していくと清音から鼓音に変化する。これは胃泡によるもので、左側では肺下界を正確には決定しにくい。背部では、肩甲線で第10肋骨、脊柱右側で第10胸椎棘突起の高さが肺下界である。
肺下界は、肺気腫で降下する。また、肺気腫患者の肺野を打診すると、清音に比べて持続が長く、より低調で、音量の大きい音が発生する過共鳴音という。気胸の場合にも、罹患側で過共鳴音を呈する。一方、肺下界の上昇は胸水貯留、無気肺、横隔膜の挙上、肝腫大などでみられる。
なお、肺炎、肺化膿症、腫瘍、無気肺などでは、肺組織の空気含有量が減少するため、病変部位の肺野を打診すると、清音でなく、濁音が聴かれるようになる。胸水が貯留したり、胸膜炎によって胸膜が肥厚した場合は濁音を呈する。
※ラ音とは、気管や気管支に異常があると、胸部聴診の際に聴こえる異常な肺音のことである。ラッセル音の略である。ベルクロラ音、副雑音ともいう。間質性肺炎、気管支炎、喘息など異常がある場合に聴こえる。ピーピー、ボーボー、バリバリ、プツプツといった音がする。
[打診音]
・鼓音
胃・腸管など、閉じた嚢状のものの中に空気が存在する場所を叩打したときに聴かれる。
・清音
正常肺野を叩打した際に聴取される。
・濁音
心臓・肝臓など含気量の少ない実質臓器を叩打した場合や、空気を含まない大腿部などを叩打した際などに聴取される音である。
・過共鳴音
肺の打診で確認される。肺気腫患者の肺野を打診すると、清音に比べて持続が長く、より低調で、音量の大きい音が発生するもの。また気胸の場合にも、罹患側で過共鳴音を呈する。
[聴診について] ●断続性ラ音(湿性ラ音) ●連続性ラ(乾性ラ音) |