東洋医学臨床論
次の文で示す患者の病証について治療対象となる経脈で適切なのはどれか。
「30歳の男性。半年前から便秘が続く。偏食傾向があり辛い物をよく食べる。腹部膨満感があり口臭も強い。舌質は紅、脈は滑実。」
1 肺経
2 胃経
3 小腸経
4 膀胱経
回答→2
【解説】
主訴は便秘である。東洋医学的に便秘(大便秘結)には、熱秘、虚秘、気秘、冷秘に分けられる。
辛いものをよく食べる傾向にあると胃に内熱がこもりやすくなり胃鬱熱となる。そのために津液が損傷され、胃腸は燥熱の状態となる。口臭は胃熱によるものであり、腹部膨満感は胃の降濁の失調によるものである。
紅舌は熱証(実熱or陰虚)であり、滑脈は痰湿や食滞を表す。
よって胃熱による便秘(熱秘)と考えられるので、治療には胃経が最も対象になると言える。
〈参考〉
「胃は通降を主る、降を以って和とする」。
蔵象学説では、胃気は常に降りる方向へ向って動いている特徴を「降を以って和とする」 としている。つまり胃は飲食物を通すことが正常な状態であるため、通降(降濁)といわれる。さらに、降濁は昇清(脾の生理特性)と協調して中焦の気機の平衡を保っているので、通降を調和させるという意味で和降と表現される場合もある。また胃の降濁は気機を下降させることによって、大腸の機能を補助している。