臨床医学各論
生後3か月の女児が乳児健康診査で股関節開排制限を指摘された。診察で誤っているのはどれか。
1 大腿部の皮膚のしわを観察する。
2 開排位での大転子と坐骨結節間の距離を診る。
3 ラックマン徴候を診る。
4 超音波断層像を診る。
【解説】
整形外科的検査を理解していれば、股関節にラックマンテスト?!となるので迷わず選べるが、問題の意図的には発育性股関節形成不全についての理解を問いたい問題だと思う。
発育性股関節形成不全(DDH)は出生前後の股関節脱臼、亜脱臼など大腿骨頭が寛骨臼からはみ出して臼蓋形成不全につながりうる状態を含む疾患概念であり、かつては先天性股関節脱臼と呼ばれていた。症状は頻出なので覚えておこう!
[症状]
・開排制限
股関節が開きにくい状態。
・アリス徴候
下肢の短縮を確認する検査。膝を立てると脱臼側の膝の位置は低くなる。
・クリックサイン
徒手的に児の股関節を開排させたり閉じたりする際に、コクンとした感覚が手に伝わる。オルトラーニ法やバーローテストなどがある。
・大腿皮膚溝の左右非対称
脱臼側の皮膚溝は正常側と比較して、数が多く、長く、深い。
・テロコープサイン
脱臼側の大腿骨を長軸方向に引き上げたり下げたりすると過大に動く。
・大転子高位
股関節を45°屈曲した状態で側方から観察すると、大転子がローザーネルトン線より上にある。
・寛骨臼の空虚
正常な股関節ではスカルパ三角部に骨頭の骨抵抗を感じれるが、脱臼側では空虚となる。
※装具はリーメンビューゲルを使用。
※歩行が開始するまでに治療を放置された場合の幼児は、処女歩行の遅延、跛行、トレンデレンブルグ跛行、デュシェンヌ跛行、脊椎の変形などがみられる。
※ラックマン徴候は、膝の前十字靭帯損傷(ACL)の判定に用いる検査法である。